「雲雀さん、雲雀さーん!!」
屋上にいるかと思って来てみたが、ハズレのようだった。
いつもはここで昼寝をしているのに…。
友達からはやめておいた方がいいよマジでと言われたけども、やめられない。
むしろ余計に燃えるのです。
ああ、雲雀さん。わたしはアナタが大好きです。
並盛最強で孤高の浮雲だと赤ちゃんが教えてくれました。何故学校に赤ちゃんがいたのかは分かりかねますが、その言葉は彼にぴったりでした。何かに縛られることもない、群れるのをも嫌っている。
まさに孤高の浮雲!気高いプライド!彼を見る度に胸は高鳴りました。
しばらく屋上で待っていると学ランを肩に掛けただけの彼がやってきました。
立ち上がったわたしの影に気付いて振り返り、見上げます。
また君か、みたいな表情を彼が一瞬垣間見せました。そうです、えへへ、またわたしです。
「屋上は生徒立ち入り禁止だと何度言えば分かるんだい?」
例え女でも容赦なしと聞いたことがあります。度がすぎると怒られるかな。
「何度でも。耳元で囁いてくれると効果倍増です」
「咬み殺されたいの?」
「甘咬みならば是非」
にこにこ(いやニヤニヤの方が妥当)と彼を見下ろしていたかもしれません。
噂の武器はこの時も見られませんでした。意外に女性には優しいとか?
「僕に構わないでくれるかな」
と、油断してたら何かがが飛んできたました。トンファーだとは一瞬思いもしませんでした。
彼の言葉に傷付いて涙ぐみ、顔を逸らしていなかったら今ごろは顔面直撃だったかもしれません。
…まあ、半分妄想が混ざって嘘になっておりますが。あぶない危ない。
「雲雀さんの満面の笑みが見られたら帰ります」
「ふざけないでくれる」
「大真面目のめですよ」
「意味がわからないよ君」
大真面目なのです。
何せわたし達は雲雀さんの笑顔を見るために結成された組織ですから。
リーダーはわたしで会員数はわたし含め1人。ヤッホー!さみしいね!!
後ろに転がっていたトンファーを拾いあげ、彼に投げて返してやりました。彼は片手で受け取ります。かっこよすぎる。
「次、変なこと言ったら手加減しないからね」
女性には優しいみたい。手加減していてくれたみたいです。
わたしは笑いながら肩をすくめました。
彼の特等席から降り、天を仰ぐと同時に並盛の空にベルが響き渡っていくのが聴こえました。
ここで、「これがわたし達を祝福するベルなのね」なんてことを言ったら、
天のベルまで聴ける可能性が高くなってしまいますので、あえて黙っておきました。
音は、心地よい風に運ばれて遠くまで流れていきます。
病的に熱中しているわたしの心の妙薬に効くのかなという戯言も風に流してしまいましょう。
わたしには届かないとわかっていたけれども、跳ばすにはいられませんでした。
この恋心を治す妙薬を、いつ天が落としてくれるのでしょうか。
ただ、待つしなありません。
恋煩いの処方箋はあなたしかつくれないのだから。